2010/02

動く細部の秘密

日曜日、昨年秋にオープンした銀座のポーラ美術館に出掛けました。私があまり知らなかった方、新聞に小さく掲載されたチャック・ホバーマンの展示に興味があって、即行動に移したのです。お昼前だったので入館者は私一人、展示空間ひとり占めの状態がしばらく続いたのでした。作品を愛でるゆったりした時間を過ごすと共に、同時に土地柄からすこし勿体無い感じもありました。建築に動く部位を取り入れている点では、私が目指している方向と似ています。会場に置かれた動くアイデアの中には、知らずに遅まきながら考えた私と、瓜二つの作品もありました。入場者が直接手で作品を動かすことができるので、変化する造形を楽しめて、通常の美術鑑賞とは異なる刺激があります。僭越ではありますが同業者と見做しまして、感想を記してみます。彼の作品は私が日ごろ一番悩んでいる個所を巧みに避けていました。会場に置かれたトランスフォーマー式の玩具がひとつ故障していましたが、組みあげられたパーツの集合造形体について、組み立てる手間等を考えただけでも、所謂量産品を大前提に仕上げた商品ではないと思います。つまり建築作品と同じく一品生産として、「動く機械部品」が展示されているのです。もうすこし泥臭く踏み込んで「工業製品の建築化」を演出できないものかと、感じて仕舞う所があります。でも私自身が思い付かない新鮮で面白いアイデアがあって、柔軟な発想に感心しきりです。建築家は空間認識、意識が普通の人よりも鋭敏だと思うのですが、それと同じ位に幾何(あるいはパターン認識?)的発想に長けた人種と捉えますと、会場に展示された彼の作品には、その幾何的資質が溢れ出ていることが解ります。動く造形の細部には幾何的発想が豊富で、アイデアの着想は展示物の逆を辿ること、そうすれば彼の発想に接近できるのだろうかと、一人考えながら銀座の街をあとにしました。

写真解説

この建物外壁際に設置された、動くパネルも是非その現物を拝みたいと前から思っていた訳なので、当日は美術館と両方を楽しめました。会場のパンダグラフ式動く造形をパチリ。