2009/03

衰える復元力

展示会も無事終了して一息付きましたので、あれこれ読み物を漁りましたら、興味深い啓蒙書を見つけました。題名「実りなき秋」は、米国農業分野で推進された大量生産について、警告を発して注目に値する本です。ミツバチ群崩壊症候群の原因を追いかけて得た著者の教訓、「効率に支配されたシステムは復元力に乏しい」との指摘は新鮮でした。単に農業分野だけでは無く、全ての大量生産システムが抱える危うさに警鐘を鳴らしています。「過去数十年間にわたり、私たちは農業システムにおいて効率化を極限にまで推進めてきた。そのために復元力を犠牲にしていることなど一切無頓着だった。・・・システムの複雑さと連結度が高ければ高いほど、ほんの些細な問題がシステム全体を崩壊させる可能性を高くする。2003年に北アメリカに大停電を引き起こした電力網も、病原体が地球全体に拡がる傾向も、金融スステムの停止もこの一例にすぎない。」・・・おそらく私たちは、例えば車の販売台数が極端に落ち込む因果関係を経済学的分析で捉えますが、既に先進国の産業主義的な成長モデルが限界に達しつつあると捉えれば、量産と消費のバランスを見極める為に、ある種生命論的な(適切な表現が浮かびません)視点を必用とする時代に、足を踏み入れているのです。本書は白亜紀末期から始まった昆虫と花の巧妙な共生、その後人類が出現してミツバチを効率良く家畜化した過程を丁寧に描いています。長い地球の歴史から垣間見えるのは、近年の経済グローバル化が促した効率化競争の特異さ、不健康が炙り出されていることです。建築部品の開発に量産化のメリットを生かしたいと、日々試行錯誤を繰返している私には、無視出来ない問いかけです。しかし米国人も、億面無く貧乏に備わった復元力を賞賛?となると、読後シニカルな感慨に襲われたことも確かです。

写真解説

翻訳では「実りなき秋」のタイトルよりも副題を前面に押し出しています。英語表題はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を想起させるなあと思いましたら、どうやら著者の意図もカーソンの本が下地としてあった様子です。