2007/12

ピンの話

以前に携った住宅の施主からですが、コンクリートスラブ先端面の汚れ防止対策の依頼がありました。コンクリート外壁面汚れ防止の為に、笠木の出を十分にとる対策が施されたのは、打ち放しコンクリート建築が一般化して、暫らく経ってからだったと思います。外壁が汚れてみっとも無い建物はこうした処理を施していません。今回はバルコニーのスラブ先端面に付いた汚れを指摘され、いささか虚を突かれた思いがありました。他の壁が汚れていない分だけ目立つのです。早速、以前担当した建設会社に水切り金物と撥水材の再塗装をお願いした訳ですが、長さにすると7m程度の水切り設置とスラブ先端の撥水材再塗装に、結構な見積額が示され、慌てました。些細な工事に各職人を対応させる為に、人件費の積み重ねだけで、一般の人が予想する値段を、はるかに越えてしまうのです。大袈裟な言い方ですが、近代の産業化が果した「分業」の効用が、建設業には不合理に働く場面が多々ありますね。この矛盾は、私が開発の仕事に携ってから量産化の問題に突き当たり、常に頭を悩ます事柄でもあります。バブルの頃、いままで経済に無関心であった人間が、あれこれと経済学の本を乱読しはじめた訳ですが、分業の効用を唱えたアダム・スミスの国富論に接して、そこに記された「工場ピン製作の話」に当時、妙にリアリティを覚えた事を思い出します。建築にとって近代化とは何であったのでしょうか?こうした途方も無い問いを、自身に投げかける必要性を今更ながら感じる年の瀬です。

写真解説

あっという間に師走となり、焦ります。本文は最近読んだ本の影響もあります。先月、出張の際に駅で購入した「世界経済は危機を乗越えるか」すこし古い本ですが論者に引かれて購入、そして先日、神田の南洋堂で「住に纏わる建築の夢」を見つけました。